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2007年 01月 12日
昨年末から年始にかけてのベルン旅行の途中で書体について考えたこと。
企業制定書体について気がついたことがふたつ。まずは DB( ドイツ鉄道 )の制定書体について。DB のサイトの左上やロゴの隣に使われているのがその書体。 DB の使う書体が Helvetica から制定書体に変わってから初めて長旅でDBを利用した。急行 ICE の車内に置いてある雑誌『Mobil』や急行の運行時刻表などを見ると、それまで Helvetica で組まれていたのがすべて制定書体に切り替わっているのに気がついて、書体のデザインが気になった。少し読んでいるうちに慣れるかなと思ったが、ちょっと個性が強すぎる気がして違和感がある。昔は Helvetica で、新しさこそ無いけれど、どことなく落ち着きがあったように思う。「Helvetica が優れている」みたいな宣伝じみたことを言うつもりはないが、長年かかって少しずつ形が整ってきた書体はどこか「落ち着き」があって、それは新しい書体ではなかなか到達し得ないレベルじゃないだろうか。新しさと落ち着きとを兼ね備えたサンセリフは難しい。 ふたつめは、スイスのスーパーマーケットのチェーンCoop も独自の書体で広告チラシや店内の表示などを統一していたこと。制定書体で個性を主張する、という手法はヨーロッパではすっかり定着した気がする。小文字の g に特徴があって、やや幅広で何となく親しみやすいデザインになっている。幅広のデザインというのは珍しい。 書体デザインのクセから、たぶんブルーノ・マークがつくったのかなと思っていたが、調べてみたらやっぱりそうだった。彼のデザイン事務所 Dalton Maag のサイト に載っていた。書体名は分からなくとも、誰がつくった書体か、というのは分かることがよくあって、会社で書体検索を頼まれたときにデザイナーの名前から探し当てることを時々する。ブルーノとは、ロンドンで夜間学校にカリグラフィを習いに行った 1989 年秋に知り合って、いっしょに教室に通った。バーゼルでデザインを学んだ後モノタイプでデジタル書体のデザイナーとして働いていた彼がすごく大人に見えた。そのころコンピュータで文字なんかできるかと思っていた私は、自分の考えを変えようと彼のスタジオに遊びに行ったりもした。2004 年にスイスのインターラーケンで開かれたライノタイプのパートナーコンファレンスでは、彼と久しぶりに会ってトゥンゼー湖畔でゆっくり話をした。同じ仕事をしているなんて面白い、と笑った。ちなみに、この Coop チェーンは安いだけが売り物でなく、「Fine Food」という自社ブランドの高級食料品を展開していて、チョコレートなどでは老舗 Lindt や Cailler などより高い値段を付けて売っている。 フルティガー氏の書体が多い気がしたこと。 ベルンの町は、去年の夏やおととしの秋に出張で立ち寄っていたが、その時は仕事だから観光などする余裕もなかった。今回は周りを観ることができて、落ち着いて見渡すとけっこうフルティガー氏の書体が多い。町中で目に入る書体が Frutiger だったり Avenir だったりして、フルティガー氏の書体に囲まれている、というと大げさだけれど、影響力の大きさがあらためて分かった気がした。例えば市電の停留所の表示に使われていたのは Frutiger だったし、初日に入ったショッピングセンターで周平の時計を選んだ時計店 Christ のポスターやカタログは Avenir だった。たまたま立ち寄ったレストラン Altes Tramdepot でメニューに使ってあった書体は Frutiger と Centennial という組み合わせだったし、ホテルに置いてあった Club Med の案内パンフレットも全部 Avenir で組んであった。 これがツァップ氏と彼の住む町 Darmstadt だと、当たり前だけれどそういう関係はあまり感じられない。ツァップ氏の書体の影響力はフルティガー氏と同じくらいあるはずだが、彼の書体がほとんどセリフ書体で、サインとして使われることが少ないから「町を見渡すと目に入ってくる」みたいな感じにならないためだと思う。しかもセリフ書体というカテゴリーでは、数百年も先輩の Garamond とか手強い相手がいて、そこに切り込んでいくわけだから難しい。サンセリフ体は Helvetica がやはり一番多いみたいだけれど、新しい感じを出すにはやっぱり Frutiger になるんだろうな。FontShop から新しいサンセリフ体もたくさん出ているのに、スイスでは思ったより見かけなかった気がする。 2週間ほど前、友人の O さんとメールで書体の話をいろいろやりとりしている時に、私がまったくの冗談で「ベルン観光局が『あの有名なフルティガー氏がベルン郊外にお住まいだから』みたいな理由で印刷物を Frutiger 書体に限定していたらオカシイ」ということを書いた。その冗談は意外と現実に近かった気がするが、気にし出すと目につくだけなのかもしれない。
by akobayashi_dnikki
| 2007-01-12 10:09
| 書体デザインについての話題
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